特別インタビューとして、吉野商店様を訪ねました。大好きな寿都で暮らし続けるため水産加工業をはじめた吉野さんにお話を伺いました。
 

寿都に住み続けたくて水産加工業をはじめました


「今年はしらすが不良でね。牡蠣も大しけがあったんで、脱落しちゃったものが多くって。でも、僕らの商売は、自然あってのものだからね」と海の方を眺めながら日焼けした顔で語るのは、吉野商店の吉野寿彦社長。札幌から西へ120km、日本海からの「だし風と呼ばれる強い風が吹きこむ寿都(すっつ)湾。長く緩やかなカーブを描く海岸沿い、波打際から10mもない場所に、鮭を干す「寒風やぐら」がそびえ立つ。そして、「すっつ しらす会館」と「寿都湾元祖かき小屋」が地元随一の観光地として賑っている。そのすべてを手がけるのが吉野商店である。吉野商店とは、もともと吉野社長の両親が営んでいた食料品店の名前だ。近所の人が豆腐やお酒やタバコなどを買いにくるような町の小さなお店屋さんだった。「大昔の話ですが、寿都は札幌より人口が多かったんですよ。海が近いから開拓民が多かった。ところが過疎化が進み、町の人口が減ってくると、小さなお店の売り上げで生きていくのが難しくなる。僕は寿都に住み続けたかった。母校がなくなりこのまま何もしないと街までなくなってしまうという危機感があった。何とかしたい。でも、このままでは生きていけない。そこで、しらす、鮭、牡蠣を使った水産加工業をゼロからはじめたんです。」

   

   

海のすぐ目の前にそびえ立つやぐら。「だし風」と呼ばれる強い風で鮭を乾燥させる。

 

素材そのものが価値


「しらす」から連想するのは神奈川や静岡といった太平洋。筆者は、恥ずかしながら北海道でしらすが獲れることを知らなかった。なぜしらすなのか?と聞くと、「寿都はもともとしらす漁が盛んで、郷土料理として佃煮がよく食べられていたんです」と吉野社長。続けて、「地味だからいいんだよね」と笑う。「そもそも北海道って、海産物が豊富ですよね。ウニ、イクラ、ホタテ、毛蟹、鮭。その中でしらすって地味じゃないですか。でも、だからいいと思った。寿都のしらす、名物ですから。美味しいですから。基本的な素材の良さというのは、逆立ちしても何をしても、後から得られない価値だと思うんです。」吉野社長は2018年、寿都では習慣のなかった「生のしらす丼」を提供する「すっつ しらす会館」をオープンさせた。「しらす会館を作った時は、心配されました。しらす漁は春の1ヶ月のみ。1ヶ月のためだけに、お店を作っちゃって大丈夫なのかと。ところが蓋を開けてみれば、1日500食のしらす丼が売れるお店になったから私もびっくりです。」

  

しらす漁の1ヶ月は大忙し。社長は朝の2時半に起きて市場で買い付ける。

生しらすはクール便でも送れない。現地だけで味わえる特権だ。それでもなんとか吉野商店の味を届けたいと、「しらすおどり炊き」と、寿都の寒風にさらして旨味を閉じ込めた「鮭とば」をポイント交換商品として紹介することにした。ものづくりのこだわりを問う。「しらすは水揚げされたらすぐに炊きます。鮮度が命。すぐに炊けば形もきれいに保てるんですよ」と吉野社長。たしかに、一匹一匹が大きく、食べ応えがある。「くるみ入りの佃煮は地元では珍しいんですが、金沢のくるみ煮にヒントをいただき開発しました。日本全国の美味しいものを学んで、取り入れて、もっと美味しくしたいですね。今年は兵庫県のくぎ煮にヒントをもらって生姜入りの佃煮も発売しました。」

  

「鮭とばは、長い年月をかけて常にベストな方法を探り続けてやっとここまできました。11月になるとやぐらに登って鮭を干し、寒風にさらして乾燥させる寿都ならではの製法を活かしつつコツコツ改良する。美味しさに近道なんかありません。試行錯誤するから良くなってくるんだと思います。」
 

小さな町 寿都に、観光バスが続々!


寿都は今、「生しらす丼」のほかに、吉野社長が仕掛けた「牡蠣の食べ放題」で北海道中から、はたまた道外から観光客がやってくる。「牡蠣小屋を始めたばかりの頃、周囲からは儲かるはずないと思われていました。寿都を訪れる観光客は、そんなにたくさんいませんでしたから。だから、観光バスが来てくれるようになった時は嬉しかったですね。美味しいもの食べて、もっと喜んで欲しい。吉野商店の牡蠣小屋の目玉は食べ放題。一個いくらと計算しながら食べるより、いくらでも食べていいよ!と言われたほうが、楽しいし、ワクワクしますよね。エンターテイメントがなくっちゃ。100個食べる人もいるんですよ。

  

立派に育った大ぶりの牡蠣がなんと食べ放題!

原価?喜んでもらえばいいんですよ。あまりの人気に牡蠣がなくなってしまったことがあって、お客様からこっぴどく叱られたこともありました。1日500人いらっしゃることもありますからね。仕入れ、頑張ってますよ。」
 

みなさんどうか寿都を覚えてください


寿都で生き続けるために、寿都の魅力を掘り起こし、次から次へと新しい商売を生み出してきた吉野商店。最後に次なる挑戦について聞いてみた。「牡蠣フェスなんかやってみたいですね。音楽ってワクワクしますから。牡蠣小屋の裏山でキャンプ場をつくる計画も立てています。北海道ってもともと開拓民じゃないですか。地域のしがらみとかもないし、アメリカみたいだなって思う時があります。挑戦して自分たちで作っていこうという気風とかも。まぁ、アメリカ、行ったことないけど(笑)。寿都、いいところですよ。しらす会館の目の前は、海。牡蠣小屋も道路はさんですぐ海です。夕日がきれいに沈む。ここにはお金の価値じゃはかれないものがある。ここで流れる時間とか、空気も大好き。この町をもっとみなさんに知ってほしいですね。」吉野商店は単なる水産加工業者じゃない。大好きな寿都の「まちおこし企業」だ。潮の香りを彷彿とさせる「しらすおどり炊き」と「鮭とば」を頬張れば、目の前に寿都の海が広がって見えるかもしれない。

  

実は、吉野商店がつくるまで北海道に「かき小屋」はなかったそう。

   

しらす会館の目の前に広がる寿都湾。穏やかに見えるが激しいだし風が吹く。

 

獲れたての生しらすを大釜で一気におどり炊き。ふっくら甘い佃煮


しらすは一匹一匹に存在感があり、肉厚でふっくら。甘さとしょっぱさのバランスが絶妙で箸が止まらなくなります。金沢のくるみ煮にヒントを得たくるみ入りとのセットでお楽しみください。ご飯のおかずに、おやつに、おつまみに、どんなシーンにもハマります。

すっつ しらす会館 しらすおどり炊きセット 
 

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鮭とばの常識を覆す。日本海の寒風にさらされた熟成鮭の、贅沢鮭とば


寿都湾で育った天然鮭のみを使用。熟成鮭をさらに、海から吹く激寒期の寒風にさらして旨みを凝縮させました。鮭本来の味を堪能できる、贅沢な珍味です。

鮭や吉野 鮭とば 
 

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