Q.肉汁をどう閉じ込める? A.霜降り肉で巻いちゃおう!


「霜降り肉で巻いたハンバーグ」。なんとも贅沢な響きに興味を抱かずにいられないのは、筆者だけではないでしょう。作っているのは、北海道千歳の肉の山本。北海道産牛で作ったハンバーグというだけで美味しそうなのに、そのうえ北海道産牛の霜降り肉でハンバーグを巻いてしまったのだからたまらない。なぜ「巻く」という発想にいたったのか、同社の山本社長に尋ねると「もともと、どのようにして肉汁を閉じ込めるか? という議論を社内でしていた中で、“霜降り肉で巻いちゃうのはどうだろう?”というアイデアが出てきました。」山本社長は続ける。「うちの商品づくりのポリシーは“見ておいしい、食べておいしい”なんです。」なるほど、一見突拍子もないアイデアにも思えるが、そのポリシーを聞いて納得。霜降り肉で巻かれたハンバーグ、確かに見るからにおいしいのだ。

 
「見ておいしい」へのこだわり。


肉の山本はなぜ「見ておいしい」ことにこだわるのか。それは同社の成長の歴史に隠されている。創業家の三代目にあたる山本社長。昭和26年に山本社長の祖父が千歳で創業した一軒の肉屋が同社の始まりだ。しかし、創業わずか数年後に高度経済成長期を迎えると市場は大きく変わる。スーパーの台頭だ。もともと、自店と個人商店への卸がメインだった肉の山本は苦境に立たされた。山本社長の父である二代目の時代には、個人商店の淘汰も進み経営は厳しく、廃業を考えていたという。そこで当時29歳だった山本社長は一念発起。幼少期に見てきた祖父への憧れもあり、肉の山本をリスタートさせる決意をした。実質一人での再出発だった。

 最初に山本社長が考えたのは、肉屋の原点に立ち返る「原点回帰」。製造卸として、一人で肉を仕入れ、切って、飲食店へ営業に回ることで一軒ずつ取引先を増やしていったのだ。地道な努力は少しずつ実を結び、2人3人と社員も増えていった。会社は順調に成長していった。

 決して平坦な道のりではなかった。スーパーや百貨店が小売りの主役になり、肉の山本も自社の商品をどう売っていくか?ということに向き合い続けてきた。その答えのひとつが「バイヤーが売りたい商品づくり」だ。自分たちメーカーが作りたい商品よりも、お店のバイヤーさんとの対話を通して、どんな商品を売り場で売りたいかというニーズを拾う。そうして出来た商品が売り場にならぶ訳だが、肉という生鮮食品は、見た目も大事。「温度管理がうまく行かずに、バイヤーさん に“変色しちゃうから売れないよ” と言われるような失敗もしてきた。」たしかに、いくら食べておいしくても、見た目がおいしそうでなければ、お店で手に取ってもらえない。でも、見ておいしそうなら手に取ってもらえるし、実際に味わってもらえる。なるほど確かに、霜降り肉で巻いたハンバーグは見た目にもおいしい。「これは何?」と興味を引かれる人も多いそう。“見ておいしい、食べておいしい”は、そうした現場との積み重ねの結果生まれた、同社のポリシーなのだ。

営業と現場のリレーションが商品開発には必要不可欠。
そのおかげか、役職や部署にとらわれないフラットな社風が印象的でした。

 
こだわりの焼き方、自由な食べ方。


山本社長ひとりから始まった、肉の山本の第二創業期。今では、社員は80人を超すほどになり、それに比例して売上げも伸び、7年前には新社屋も建った。小売店や飲食店への卸も堅調に伸ばしつつ、「千歳ラム工房」、「肉山ハム」といった自社ブランドで多数の商品展開もしている。当時誰も知らなかった会社は、北海道の食肉業界では誰もが知る存在になった。

 自社商品開発の裏話に話が及ぶと、「ハンバーグの最初の試作は散々だった」と山本社長は笑う。普通にフライパンで焼くと、霜降り肉が真っ黒に焦げてしまったのだ。「せっかく霜降り肉で巻いているのだから、その焼き加減と、中の焼き加減とが両立できていなきゃならない。試行錯誤を経て、あの焼き方に至りました。調理は面倒かもしれませんが(笑)」“あの焼き方”とはこうだ。外をフライパンで軽く焼き目がつくまで焼いたあとに、オーブンやトースターで中に火を通す。そうすることで、外と中の焼き加減が両立するという訳だ。

 ちなみにこのハンバーグ、こねから霜降り肉の巻き付けまで手作業によるものだ。「機械による大量生産が出来ないので、作れる数量がどうしても限られてしまいます。」と山本社長は苦笑いをうかべる。「お客様には好きな食べ方をしてほしいです。添付のソースももちろんおいしいですし、ポン酢やかるく塩だけ振るのもおすすめです。肉感を楽しんでほしいですね。」終始穏やかな笑顔で語るのが印象的だった山本社長の言葉に、商品への確かな自信を感じた。

   

ハンバーグは、こねから霜降り肉で巻く工程まで一つひとつ手作業で行う。
この丁寧な仕事があるからこそ、しっかりした肉感のある仕上がりになるのだそう。

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